NHKの嘘に騙されるな TOP

高裁判決の間違い

東京高等裁判所のレオパレス裁判 平成28(ネ)5233 の判決の誤りについて指摘します。

実は私、この件にはあまり興味がありませんでした。なぜなら、受信契約はNHK放送の受信意思の有無により成立するものなので、レオパレスを特別視する必要はなく、入居者がNHK放送を受信しないなら断ればいいだけだと考えていたからです。

しかし、この判決内容を見てビックリ。あまりにもヒドイ。

「受信設備を設置」の定義規定は存在する。その1

P4 2(1)   放送法64条1項は,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は,協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。」 と規定して,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」が控訴人と放送受信契約を締結する義務を負うことを明らかにしている。
ところで,放送法は,同項の「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」について定義規定を置いておらず,民法その他の法律にも定義規定はない。 そうすると,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」は放送法固有の概念であるから,その意義を解釈するに当たっては,同項の文言だけでなく, その立法趣旨も併せて考慮することが可能であり,かつ適切である。

電気通信事業法9条の「電気通信回線設備を設置」についての総務省の見解が「電気通信事業者のネットワーク構築マニュアル」に記されています。

「放送」とは、公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信事業法の電気通信の送信(放送法2条1)ですから、 放送設備は、電気通信事業法の「電気通信回線設備」となりますし、それを受ける「受信設備」も同様です。


この「電気通信回線設備を設置」についての総務省の見解は

光ファイバ等を電気通信が可能な状態に構成した上で、電気通信を行う主体が継続的に支配・管理することをいいます。

としています。

これは放送に言い換えれば、

テレビ受信機等を放送受信が可能な状態に構成した上で、放送受信を行う主体が継続的に支配・管理することをいいます。

となります。

「受信設備を設置」の定義規定は存在する。その2

「その1」で示した総務省の見解と同じ趣旨は、最も電気通信の基本となる無線通信を規定した「電波法」からも導き出せます。というか総務省はこれを意識した説明を行っているのでしょう。

学問的にも電波法的にも、無線電気通信(NHK放送は無線による基幹放送のみ)は、局間で成立します。これは、無線局免許状の「通信の相手方」を見ても分かるはずです。

よって、放送法64条の「受信が可能」が意味するものは、受信局と一致している必要があります。

局の定義については電波法第2条5にあり、そこに「受信のみを目的とするものを含まない」とあり、法律上の表現として「受信局」という表現ができないため、それを意味する説明が、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置」でなければ、無線電気通信としての成立要件を満たしません。

局とは、「無線設備及び無線設備の操作を行う者の総体」であるため、受信設備に操作員を置くことにより「総体化」することが「設置」の意味となります。

実際に放送局など送信側の無線局免許人(設置者)は、無線従事者(操作員)を適切に配置する責任があります。

したがって、レオパレスの場合、対象受信設備(部屋)に操作員(入居者)を配置した者が設置者として契約義務者となります。

少し?前までは、放送は電波法の無線通信の送信だったはずです。現在でも本質的な意味が変わっているとは考え難いですし、NHKの行っている基幹放送局の免許は電波法により与えられるものであり、電波法の通信ルールや無線電気通信の概念に従うものです。

無線設備を使用して正しく受信できたことを人が判断できて無線電気通信の受信が成立します。そうでなければ電波法66条(放送ではありませんが無線通信の受信という意味で同じ)など、成立しない法律が沢山存在することになります。

これが、放送法2条一で、「放送は公衆(人)が受信する」と定義されている理由です。放送はテレビ等の機器ではなく「人」が受信するものなのです。

良い放送番組を提供するために設立されたのではない

P4      同項が放送受信契約の締結義務を定めたのは,控訴人があまねく全国に豊かでかつ良い放送番組を提供するために設立された公共的機関であり言論報道機関であり,

放送法15条は、「あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内基幹放送を行う」なのですが、意味が全く違うという事に気が付いていません。

私は、よく宅配便に例えるのですが、放送番組=荷物,放送=配送です。

放送法は荷物に関する種別(教養番組、教育番組、報道番組など)と配送方法(基幹放送,一般放送など)を定めており、具体的に中身(番組)については放送事業者や審議機関がルールを作れとなっており、放送法自体は主に配送方法についてを定めたものです。

放送法15条の内容を宅配便に置き換えると

「あまねく日本全国において入手できるように、優れた商品を安全(壊さず)に配送する」

であり、ようするに、これを達成するための「道路と車両整備」をしろと言っているのです。

事実、放送法の制定と同時?に「聴取料」という視聴の対価を示す名称が、「受信料」という受信の対価、いわば送料受取人払いの「送料」に変更されました。

この時代は、番組製作費より放送設備設置のための費用が大きかったことは間違いないでしょう。このため、番組に直結する「聴取料」では調子が悪かったものと思われます。

また、「豊かで、かつ、良い放送番組」という定義こそ定義規定はありません。

しかし、これは昭和25年の時代背景を考えると、直前の戦中まで放送も通信も政府が管理しており特に放送番組について政府が事実を改ざんしていた事が問題となり、せめて放送だけは政府と切り離さなければならないという趣旨の下、もともと一つであった電波法と放送法が切り離されたと思われる事実を考慮すると、

 悪い放送番組=政府等により真実を改ざんされた嘘情報

 良い放送番組=真実をそのまま伝えた信頼のおける情報

という程度の差しかなく、現在においては強く意識するレベルのものではありません。

とにかく、放送法15条は「放送を行う」が最終目的になっており、番組を強調したものではありません。

番組の意識が強くなればなるほど正確な判断はできないでしょう。

違法行為を認めるのか?

P4      控訴人の財産的基礎を税収に委ねた場合には番組編集に国の影響が及ぶことが避けられず

放送法3条を何だと思っているのでしょう。違法行為を前提とするのが裁判所のすることでしょうか?

ということは、税金が絡むと三権分立は不可能という解釈になりそうですね。

この判決自体も、法律以外の国(政府)の影響が及んでいるという事になりそうです。

続きはこちら

やはり分かっていない「放送の受信」

P5      すなわち,上述した同項の趣旨に照らせば,「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」とは,本来,控訴人が直接費用負担を求めるだけの実質的な関係を有する者, すなわち受信設備により放送を受信することができる状態にある者であることを要し,かつ,それで足りると解される。

受信者は放送受信において一切のメリット(利益)はありません。直接費用負担を求めるだけの実質的な関係を有する者のはずがないのです。

受信した結果により得る情報(番組)の利益者は視聴者ですが、これは明らかに放送法64条の対象外です。


図をクリックすると説明のページを表示します

したがって、放送受信が可能だという事実において、情報そのものではなく、情報提供できる仕組みが有ることによる利益者が、直接費用負担を求めるだけの実質的な関係者となるのであり、これは、放送受信設備が有ることにより集客上のメリットが有るレオパレスということになります。

送信者と受信者の役割は、情報発信者の「意思」を正確に受渡しするまでが役割であり、その受渡しされた「意思」を評価する者ではありませんから、その通信において何のメリットも生じません。

たとえば、昔の船舶無線で救助要請の通信を行う場合、(複雑な仕組みの方が分かり易いので)

① 船長(情報発信者)が、船の緊急事態のため救助要請を発信することを通信士(送信者)に指示する

② 通信士(送信者)は、これをSOSという符号に変換し、送信する。

③ SOSを受信した別の船の通信士は、「救助要請を受けた」と変換し船長に伝える。

④ それを受けた船長が助けにいくことを決定し救助に向かう

というのが一連の流れであり、送信者,受信者の役割②③では、自分の意思は全く無関係で、且つ、情報の内容については評価もせず、ただ、情報を正確、且つ確実に受渡しすることだけが役割であり、それを全うするために、特殊な技術を持っている者ですから、情報の内容による利益は発生しません。

放送受信の場合、③の仕事は「テレビのリモコンボタンを押す」だけです。ボタンを押しただけで何の利益が有るというのか説明していただきたいものです。

はっきりしろ!どっちなんだ

今回の判決では、至るところで受信設備の占有使用者が、「受信設備を設置した者に含まれる」と言っていますが、それでは、物理的設置者と占有使用者の両名に契約義務がある事になるという事に気が付いていないのでしょうか?

どうもこの裁判官もNHKと同じ考えしかできないようで、対象受信設備から金を取れればそれでいいという判断で終わっていますが、まずは契約義務者が誰かハッキリさせることのはずです。

放送法64条1は金の話なんてしていません。契約義務者が誰なのかとその条件を規定しているのですから、条件に2名合致するなら2名共契約義務者のはずです。

これを一方的に入居者に押し付けるなら、物理的設置者であるレオパレスが該当しないという明確な理由が必要ですね。どちらでもいいじゃダメなんですよ。


inserted by FC2 system